シネマ執事

ティッシュみたいだね 映画って

ヒューマン アーカイブ | ページ 4 / 6 | シネマ執事( 4 )

Category
トウキョウソナタ

黒沢清監督 「トウキョウソナタ」 2008 レビュー ネタバレあり

家族の解体  家族の絆。一家団欒。そんなものはもう失われた、と黒沢清は言いたいのではない。もとからそんなものは「あまり」なかったということを、ドライにそして少しユーモラスに提示してみせているだけだ。両親がいて子供がいる。しかし、そこに親子の代えがたい愛情があるとは限らない。むしろ性別や年代の離れた者どうしでは感性が異な...
小津安二郎監督 「お早よう」 1959 レビュー ネタバレあり

小津安二郎監督 「お早よう」 1959 レビュー ネタバレあり

戦後社会という桃源郷 1959年、東京。多摩川の河岸の集合住宅。丸の内あたりに勤めるサラリーマン家族が軒を並べて生活している。専業主婦同士、子供同士の間でごく自然に近所付き合いが産まれ、平凡に暮らしている。 このコミュニティは、太古からの普遍ではない。日本の歴史が稲作と同時に始まり、農耕が長らく生産手段の基本であったこ...
アカルイミライ

黒沢清監督 「アカルイミライ」 2003 レビュー ネタバレあり

とりとめない象徴の綾 黒沢清の映画では、ドラマチックな大団円に向かってストーリーが結束し、登場人物の心情が加速するような事態は起きない。象徴的な出来事は起こるが、すぐさま日常のなかに溶け込んでいく。状況は小さな驚きを巻き起こしはするが、ゆるやかに現状復帰する。 異相の露呈と現状復帰はランダムに発生するが、わかりやすい起...
炎上

市川崑監督 「炎上」 1958 レビュー ネタバレあり

抽象的な美とスタイリッシュなモノクロ映像 青年は、社会との不適合に直面する。社会は、ニューカマーをすんなりとは受け入れない。受け入れられるためには、具体的な利益を提供しなければならないし、害悪を与えない存在であることを証明しなければならない。 青年に利益を創出するスキルなどない。そのくせ社会に反抗的な態度はとる。社会人...
ねじ式

石井輝男監督 「ねじ式」 1998 レビュー ネタバレあり

闇の消滅 21世紀の始まりごろ、闇は世界から消滅した。隅々の些細な事柄まですべて、インターネットによって可視化された。闇が消滅し、未知の事柄はなくなった。自分にとって既知でない事柄も、誰かにとっての既知であれば、容易に共有されるようになったのだ。 闇がまだ残存するころ、人々は、街灯の途絶えた暗闇の奥に潜んでいる邪悪な存...
森田芳光監督 「それから」 1985 レビュー

森田芳光監督 「それから」 1985 レビュー

森田芳光と松田優作の挑戦 1980年代、松田優作は長髪を切り、アクションをやめた。きっかけは鈴木清順監督「陽炎座(1981)」だ。長い沈黙から復活し、気焔を吐いていた清順の面妖な世界に少し戸惑いながら迷い込んだようで、結果的には堂々と鎮座した。 鈴木清順が「ツィゴイネルワイゼン(1980)」「陽炎座」で描いた二十世紀初...
破線のマリス

井坂聡監督 「破線のマリス」 2000 レビュー ネタバレあり

華やかなテレビ局 テレビ局は、まだ華やかなのだろうか? 私はテレビを全く見ないのだが、ネットの情報から類推しても、テレビというメディアが凋落していることは間違いないだろう。視聴率は低落しているし、新しいスターもあまり産まれていないようだ。老境にさしかかったビートたけしや明石家さんまが未だに大御所として君臨していることが...
水のないプール

若松孝二監督 「水のないプール」 1982 レビュー ネタバレあり

地下鉄の切符切り 地下鉄の切符切り。現代では、ほとんどなくなった職種だろう。カチカチカチとハサミの音を神経質に鳴らしながら、乗客の差し出す切符に小さな刻みを切る仕事。そんな駅員を演じる内田裕也は、終始不機嫌そうな表情だが、定期券をはっきり見せない客がいると威丈高に詰問する。本来は正規運賃の確認行為なのだろうが、内田の感...
はだかっ子

田坂具隆監督 「はだかっ子」 1961 レビュー

昭和30年代、所沢 タイトルバックは、空撮から始まる。昭和30年代の所沢。住宅は少なく、一面の濃い緑は茶畑なのだろう。電車や街道が濃緑を闊達に切り取って走る。この豊かな人工の濃緑が、まず、映画の豊潤な色彩感覚を頭上から制覇する。 「はだかっ子」は児童文学を原作としており、主人公は小学6年生の元太だ。映画は元太と同級生た...
からっ風野郎

増村保造監督 「からっ風野郎」 1960 レビュー

三島由紀夫初の主演作 三島は当時35歳。数々の傑作を世に出し、既に文豪の域に達していた三島だが、実はまだ30代。テレビや雑誌など、様々なメディアに登場する、時代を代表する有名人でもあった。 三島は自身の監督作「憂国(66)」に主演している他、数本の映画に出演しているが、商業映画の本格的な主演は本作のみである。 監督は増...

Other

More
Return Top