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    黒い画集 寒流

    鈴木英夫監督 「黒い画集 第二話 寒流」 1961 レビュー ネタバレあり

    戦前フォーマットの喪失  戦争に敗けたんだから仕方がない。皇統が継続できただけでも有難い。しかし、ここまで木端微塵に砕かれるとは。「黒い画集 第二話 寒流」を観ると、戦前から継続するフォーマットが、1961年にはまだ残存していたことを思い知らされる。  中堅銀行員の池部良は、常務の平田昭彦に目をかけられ、池袋支店長に抜...
    六月の蛇

    塚本晋也監督 「六月の蛇」 2002 レビュー ネタバレあり

    カルトなヒロイン  強い雨が降りしきるなか、黒沢あすかが、乱れる。白黒ならぬ、「青白」とでも呼ぼうか。モノクロームのフィルムが青い陰影を形どる。無機質なデザイナーズマンションで自慰に耽る黒沢。残切りとでもいうか、無造作に切ったショートカット、スレンダーな肢体。塚本晋也のカルトな美意識の世界に、中性的な黒沢が棲息している...
    和田嘉訓監督 「コント55号 世紀の大弱点」 1968 レビュー

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    日本映画爛熟の境地  観客数のピークは1958年。敗戦によってリセットされた社会は、ハングリーな活気を呈した。1960年代に突入すると、社会の安定度は戦前の水準を超える。加速する成長のベースになったのは、一体感だ。みな同じことを考え、同じ方法論で行動した。  一体感を創出したのは、テレビだ。映画は、テレビ的な親近感をプ...
    冷たい熱帯魚

    園子温監督 「冷たい熱帯魚」 2010 レビュー

    原初の快楽  「ボディーを透明にする」と、でんでんは表現する。死体を細かく切り刻んで焼却し、残滓を川へ流す行為だ。殺人の動機は、快楽だ。欲望を満たす快楽、快楽の妨げになる人間を殺す快楽。殺人と性行為には、種の生存本能としての快楽が潜んでいる。本来、快楽を味わうことができるのは、強い人間だけだ。強い人間だけが、強い遺伝子...
    市川崑監督 「おとうと」 1960 レビュー

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    日本映画の黄金時代 映画好きは多いが、日本映画が好きな人は少ない。ましてや昭和三十年代の邦画となると、マニアックなジャンルかもしれない。しかし、私は断言する。1956年~1962年の日本映画は、全世界の映画史上最高の黄金時代だ。特に1960年は、新旧の映画監督が意欲作を多発し、大いなる活況を呈した年だ。 東宝には、天皇...
    塚本晋也監督 「双生児」 1999 レビュー

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    双生児の流離譚  江戸川乱歩の原作は、1924年に発表されている。舞台となる大徳寺医院は、医院と家屋が同棟にある造りの日本家屋だ。西洋医学の治療を施す医院と、日本建築の普遍性を感じさせる居間や寝室。折衷こそが日本的美の精髄ならば、大正時代を描いた映画は、自ずと格調高くなる。パンキッシュな塚本だからこそ、この王道を丹念に...
    ジャンプ

    竹内昌男監督 「ジャンプ」 2004 レビュー

    甘美なノスタルジー 別れた女ほど、甘いものはない。こっちが年を重ねても、彼女はあの時のまま、若く美しい。唇や指が、彼女の柔らかい身体の感触をはっきりと覚えている。出会った頃のときめきや、落したときの達成感、時折の小さな諍いや、別離のやるせなさ。ヤレなかった女だって、案外悪くない。終電の時間を気にしてドキドキした、渋谷の...
    ビートたけし監督 「みんな~やってるか!」 1995 レビュー ネタバレあり

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    【世界一くだらない傑作】 くだらない。完璧ににくだらない。シリアスで抽象的な映画を4本撮ったのは、このオチのためだったのか。ショートコントを連打する構成だが、シニカルに辛口のギャグとか、ほっこりとした笑いを誘うユーモアとか、都会的なウィットなど一切ない。ただただ低俗、完全なバカ。 ダンカンがVシネマを観ている。オープン...
    夢二

    鈴木清順監督 「夢二」 1991 レビュー ネタバレあり

    難解な映画ではない  「夢二」はわかりにくい映画ではない、ということがようやくわかった。若いころのほうが、物事を率直に自分の眼で見られないものだ。経験値も低く、マスコミの刷り込みの力も大きい。鈴木清順は、難解な映画を作る監督だと思っていた。「ツィゴイネルワイゼン(1980)」を初めて観て、幽玄な異境に誘われた。その後観...
    教祖誕生

    天間敏宏監督 「教祖誕生」 1993 レビュー ネタバレあり

    1990年代の空気 1990年代前半、私は大学をほぼ放擲し、モラトリアム生活を送っていた。深夜のアルバイトを終え、昼夜逆転の朝日に眩暈しながら、名画座を彷徨った。そんな頃、「教祖誕生」を川口の古い映画館で観た。 1980年代からずっと、日本は躁状態だった。誰もが毎日を充実して楽しんでいなければならず、そうでない奴は、「...

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