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夢二

鈴木清順監督 「夢二」 1991 レビュー ネタバレあり

難解な映画ではない  「夢二」はわかりにくい映画ではない、ということがようやくわかった。若いころのほうが、物事を率直に自分の眼で見られないものだ。経験値も低く、マスコミの刷り込みの力も大きい。鈴木清順は、難解な映画を作る監督だと思っていた。「ツィゴイネルワイゼン(1980)」を初めて観て、幽玄な異境に誘われた。その後観...
教祖誕生

天間敏宏監督 「教祖誕生」 1993 レビュー ネタバレあり

1990年代の空気 1990年代前半、私は大学をほぼ放擲し、モラトリアム生活を送っていた。深夜のアルバイトを終え、昼夜逆転の朝日に眩暈しながら、名画座を彷徨った。そんな頃、「教祖誕生」を川口の古い映画館で観た。 1980年代からずっと、日本は躁状態だった。誰もが毎日を充実して楽しんでいなければならず、そうでない奴は、「...
浮草

小津安二郎監督 「浮草」 1959 レビュー ネタバレあり

完璧な絵画  港町は真夏の陽射しに照らされている。水平線で空と海はおおらかに結ばれ、坂道も石垣も家屋も、ゆったりと夏へと開かれている。微風が風鈴を揺らしているが、女も、手にした団扇で艶めかしい風を送る。すべてが碧く揺蕩うなか、赤いポストだけが、けばけばしさを主張する。  美術館に飾られるような絵画ではない。長い歴史を受...
しとやかな獣

川島雄三監督 「しとやかな獣」 1962 レビュー ネタバレあり

大映黄金期  1962年。大映の黄金期は爛熟していた。市川崑は、ドライなヒューマニズムを切れ味鋭いカッティングで映像化した。増村保造は、日本的な情緒を忌避し、傍若無人な欲望を礼賛した。市川雷蔵は、伝統演劇の様式美を端正な虚無に変換し、映像の中で妖しく蠢いた。勝新太郎は、豪放磊落な偶像を虚実交えて体現した。  大映だけで...
十階のモスキート

崔洋一監督 「十階のモスキート」 1983 感想

ロックンロール 内田裕也こそ、ロックンロールだ。ロックンロールの神髄を完全に体現した唯一無二の存在だ。内田のロックンローラーとしての神髄は、自ら脚本を執筆した映画に刻まれている。「十階のモスキート」は、当時新人だった崔監督との共同脚本による、傑作である。 「ある時ふっと気が付くと、壁にモスキート(蚊)をつぶした小さな血...
御法度

大島渚監督 「御法度」 1999 感想

異才の軽やかな遺作 私が大島渚を知ったのは、「戦場のメリークリスマス(1983)」だった。この作品以降、大島は、映画を撮らない映画監督として「朝まで生テレビ」等のテレビ番組に出演していた。「朝生」の大島は、番組終盤に怒りを爆発させ、反体制/反権力の頑固さを披歴していた。「戦メリ」をテレビで観た後、旧作を何本かヴィデオで...
やくざ絶唱

増村保造監督 「やくざ絶唱」 1970 感想

愛すべきやんちゃ男  主演、勝新太郎。冒頭のシーン。街のチンピラどもを軽く殴り倒した後、愛人へのプレゼントを買い、勝が颯爽と家路へと闊歩する。この3分ほどで、勝新太郎という男が、この映画に君臨することが高らかに宣言される。  要するに、子供だ。やくざ稼業の男だが、組織の権力闘争などには、興味がない。威張り腐って街をのし...
宮本から君へ

真利子哲也監督 「宮本から君へ」 2019 感想

ロックンロール  ロックンロール。ロックではなく、ロックンロールだ。池松壮亮がこんなに素晴らしい俳優になるとは思っていなかった。10代のころから多くの映画に出演し、近年は賞を獲得するなど、評価が高まっていた池松だが、老成しているかのような、曖昧な存在感を纏っていた。しかし、「宮本から君へ」で宮本を演じる池松に、曖昧さな...
鍵

市川崑監督 「鍵」 1959 感想

中村鴈治郎の最高傑作 二代目中村鴈治郎は、上方歌舞伎の名優であり、人間国宝だが、1960年前後の数年間、主に大映で映画にも出演している。この時期は大映の黄金時代であり、勝新太郎、市川雷蔵の二枚看板が覇を競い、市川崑や増村保造が、芸術的野心を鋭く実現させていた。 鴈治郎はこれら大映作品で、古き関西人の軽みと洒脱を体現して...
小津安二郎監督 「秋日和」 1960 感想

小津安二郎監督 「秋日和」 1960 感想

甘いコミュニティー 「秋日和」は、3種の人間関係グループの話だ。1つ目、未亡人である原節子と娘の司葉子。仲の良い親子の双方に縁談が持ち上がることで、関係性にさざ波が起こる。2つ目は、佐分利信、中村伸郎、北竜二の古い学友だ。インテリである彼等は、社会的ステイタスの高い立場にいるが、学生気分のままじゃれあっている。3つ目は...

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