シネマ執事

ティッシュみたいだね 映画って

2020( 4 )

Year
探偵物語

根岸吉太郎監督 「探偵物語」 1983 感想

80年代が本格化した年 1980年代とは、どういう時代だったのか。80年代末に冷戦が終了したり、昭和天皇が崩御したのは偶然ではない。加速度的に進化した文明は、1989年をピークに緩やかな下降期に入ったのだ。1980年代こそ、人類文明の絶頂期だった。21世紀の人間は過去のインフラをたっぷり享受するだけで、もう変革や向上は...
野性の呼び声

映画『野性の呼び声(2020)』感想 ネタバレあり

「2020年の令和の時代にこれやるかね?」というのが一番最初の正直な感想です。 小説『野性の呼び声』は1908年に初めて映画化され、それ以降も何度も映画化されています。 多分、6,7回くらいになるんじゃないかしら。 ジャック・ロンドンの古典的な冒険小説の最新版であるこの映画は、フォックスの下で開発され、リロ&スティッチ...
私は二歳

市川崑監督 「私は二歳」 1962 感想

戦後社会という桃源郷 愛国心や伝統を尊ぶこころは、敵を憎悪するこころも培かってしまう。挨拶をしない人に薄っすら敵意を抱くがごとく。大航海時代以降の世界では、異民族の衝突が多発し、戦争の規模は劇的に拡大した。 日本も史上最大の戦争を闘い、史上最大の敗北を喫した。国民精神は致命的な打撃を受けたが、すぐさま復興に向けて立ち上...
戦場のメリークリスマス

大島渚監督 「戦場のメリークリスマス」 1983 レビュー

東洋と西洋 東洋と西洋。戦争と平和。秩序と混沌。体制と革新。右と左。大島渚は、対立する概念の相克を論じ続けた。後者に与する思想を饒舌に語るが、前者への洞察もないがしろにはしない。過剰に論理的であるからこそ、時には激情が露わになった。 「戦場のメリークリスマス」は、この大島的相克を寡黙に表現した最高傑作である。 1942...
叫

黒沢清監督 「叫」 2007 レビュー 

殺風景な湾岸の荒涼 東京湾岸。高層ビルや巨大な橋梁と朽ちた護岸や廃墟が混在する地帯。改めて地図で確認してみると、埋め立て地の面積はかなり広いのだが、全ての土地が有効利用されているとは言い難い。 役所広司演じる刑事は、湾岸地域を管轄する警察署に勤務する刑事だ。彼の自宅もこの地域の古い団地であり、連続殺人事件もこの空虚な水...
トウキョウソナタ

黒沢清監督 「トウキョウソナタ」 2008 レビュー ネタバレあり

家族の解体  家族の絆。一家団欒。そんなものはもう失われた、と黒沢清は言いたいのではない。もとからそんなものは「あまり」なかったということを、ドライにそして少しユーモラスに提示してみせているだけだ。両親がいて子供がいる。しかし、そこに親子の代えがたい愛情があるとは限らない。むしろ性別や年代の離れた者どうしでは感性が異な...
小津安二郎監督 「お早よう」 1959 レビュー ネタバレあり

小津安二郎監督 「お早よう」 1959 レビュー ネタバレあり

戦後社会という桃源郷 1959年、東京。多摩川の河岸の集合住宅。丸の内あたりに勤めるサラリーマン家族が軒を並べて生活している。専業主婦同士、子供同士の間でごく自然に近所付き合いが産まれ、平凡に暮らしている。 このコミュニティは、太古からの普遍ではない。日本の歴史が稲作と同時に始まり、農耕が長らく生産手段の基本であったこ...
アカルイミライ

黒沢清監督 「アカルイミライ」 2003 レビュー ネタバレあり

とりとめない象徴の綾 黒沢清の映画では、ドラマチックな大団円に向かってストーリーが結束し、登場人物の心情が加速するような事態は起きない。象徴的な出来事は起こるが、すぐさま日常のなかに溶け込んでいく。状況は小さな驚きを巻き起こしはするが、ゆるやかに現状復帰する。 異相の露呈と現状復帰はランダムに発生するが、わかりやすい起...
炎上

市川崑監督 「炎上」 1958 レビュー ネタバレあり

抽象的な美とスタイリッシュなモノクロ映像 青年は、社会との不適合に直面する。社会は、ニューカマーをすんなりとは受け入れない。受け入れられるためには、具体的な利益を提供しなければならないし、害悪を与えない存在であることを証明しなければならない。 青年に利益を創出するスキルなどない。そのくせ社会に反抗的な態度はとる。社会人...

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