シネマ執事

ティッシュみたいだね 映画って

2022

Year
朝が来る

河瀬直美監督 「朝が来る」 2020 レビュー

永作博美の笑顔  永作博美の少し横長い顔。人懐っこい笑顔は、若い頃と変わらない。誠実に人に向き合い、自分にもポジティブだ。企まざるユーモアが、愛らしい笑顔いっぱいに拡がる。とびきりの美人ではないかもしれないが、女らしい色香はすこぶる魅力的だ。そんな永作の化粧っ気のない顔が、幾度もアップで映される。年輪を経た笑顔は慈愛に...
吾輩は猫である

市川崑監督 「吾輩は猫である」 1975 レビュー

俗物のおしゃべり 俗物とは、世間に漂う人だ。自らの信念を持たず、常に空気を読む。「吾輩は猫である」は、夏目漱石が俗物を風刺した小説である。  中学教師の仲代達矢は、妻(波乃久里子)と三人の子供と共に、雨漏りのする安普請の家に暮らしている。この家に、さして用件もなく訪れる伊丹十三、岡本信人、前田武彦、篠田三郎。俗物たちは...
空白

𠮷田恵輔監督 「空白」 2021 レビュー ネタバレあり

薄い人  世の中には、目立つ人がいる。頭の良い人、仕事の出来る人、異性にモテる人、ルックスのいい人、声の大きい人。しかし、そんな特長のある人ばかりではない。むしろ、目立たず、存在感の薄い人のほうが多い。彼等は、自己主張することなく、ひっそりと生きている。彼等の考えていることは、周囲に伝わらない。攻撃性や嫉妬にも乏しいの...
北野武監督 「その男、凶暴につき」 1989 レビュー ネタバレあり

北野武監督 「その男、凶暴につき」 1989 レビュー ネタバレあり

常識的な感性  北野武は、ごく常識的な感性を持った人だ。往年のオールナイトニッポンのトークを聴くとわかる。たけしは、権力者と市井人、富豪と貧民が混在する社会の「狭間」に産まれる「間抜け」な状態を揶揄して笑いに転化した。漫才やコントでもこの「間抜け」を嗤い、かつ、愛着して表現した。「間抜け」の面白さを巧く表現するには、双...
滝田洋二郎監督 「コミック雑誌なんかいらない」 1986 レビュー ネタバレあり

滝田洋二郎監督 「コミック雑誌なんかいらない」 1986 レビュー ネタバレあり

テレビ全盛期  1980年代、日本のテレビは全盛期を迎えた。報道やバラエティは、半ばリアル、半ばヴァーチャルなメディア空間を創出し、大衆はお手軽なエンタテイメントとしてそれを消費した。「コミック雑誌なんかいらない」には、当時のフジテレビ横澤彪プロデューサーが本人役で出演し、部下たちに訓示する。 「視聴者は、ニュースもバ...
新藤兼人監督 「北斎漫画」 1981 レビュー ネタバレあり

新藤兼人監督 「北斎漫画」 1981 レビュー ネタバレあり

江戸の爛熟  江戸の人口は100万人を超えていた。世界一の大都市だったという説もある。日本はガラパゴス的な発展を遂げ、1700年代後半、化政期には文化の爛熟期を迎えていた。葛飾北斎は1760年に産まれ、1848年に死んだ。その20年後に明治維新が起こったことになる。  「北斎漫画」には、曲亭馬琴(西田敏行)、十返舎一九...

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